2009/12/01

この胸に深々と突き刺さる矢を抜け 上(白石一文)


【タイトル】この胸に深々と突き刺さる矢を抜け 上
【著者名】白石一文
【発行年月日(初版)】2009年1月26日初版
【登場人物の年齢層】成人
【概略】「週刊時代」の編集長、カワバタ・タケヒコは、仕事をエサに、新人グラビアアイドル、フジサキ・リコを抱いた。政権党の大スキャンダルを報じる最新号の発売前日、みそぎのつもりで行った、その場限りの情事のはずだった。世俗の極みで生き続けた男が、本来の軌道を外れて漂い始める、その行き着く先にあるものは?白石一文が全身全霊を賭けて挑む、必読の最高傑作。(「BOOK」データベースより)
【感想】朝日新聞に掲載されている書評を読んだのと「僕の中の壊れていない部分」を読んだのがきっかけ。
この作品も「僕の中の…」と同様に、物語の文章と文章の間に筆者の主張が表れた評論的な文章が組み込まれている。ただ「僕の中の…」と比べて物語は物語としてより確立しているので読みやすい。また、この上巻は経済格差について取り上げられているので具体性が高く「僕の中の…」で取り扱っている生と死よりも主張が理解しやすいと思う。
 この本の主張のなかで一番心に残ったのは次の文章である。
「ナカヤマのような男は、例えば自分が秀才だという現実が、彼より勉強のできない多くの人間の力によって支えられている事がわかっていない。美人が自分の力だけで自惚れているようなものだ。美人が美人でいらえるのは、彼女より醜い女性が大勢いるからにすぎない。
 ナカヤマは、オグラのような存在に依存する事でようやく自分の豊かさが実現しているという相対的認識を持っていない。少数のブルジョワは大多数のプロレタリアートによって作られる。その事実を失念したものはいずれ粛正の憂き目にあってしまうのだ。」非常に唸ってしまった。全く持ってその通りである。他にも主張があったが、私はこの文章がかなり心に残った。はやく下巻を読まなければ。
【ランク】-(下巻を読み終えてから設定)
【読書中メモの総覧】なし
【備考】2009年11月30日に読み終えた。

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