2009/09/30

エクスタシー2(村上龍)


【タイトル】エクスタシー
【著者名】村上龍
【発行年月日(初版)】1995年4月25日(文庫)
【登場人物の年齢層】20〜30代
【概略】ニューヨークでホームレスをしているヤザキとカタオカケイコ、レイコによる麻薬とセックスを絡めた快楽の話と主人公のミヤシタによる物語(by me)/「ゴッホがなぜ耳を切ったか、わかるかい」とそのホームレスの男は僕に日本語で話しかけてきた。ニューヨーク、ダウンタウンのバウアリー。男は、「ここに電話してオレと会ったことを言えば、お金を貰えるよ」と紙切れをくれた。東京のケイコと、パリのレイコと男、恍惚のゲームは果てしなく繰り返される。国際都市を舞台に、人間の究極の快楽を追求した長編小説。(「BOOK」データベースより)
【感想】以前読んだ本の再読。一回目の感想。
 予想はしていたが二回読んでもやはりこの小説はインパクトが強い。麻薬を服用しているときの描写やエックスを服用してのSMの描写など、村上龍は絶対に麻薬を服用したことがあるに違いないと思わせる内容である。よく麻薬の使用を撲滅使用とするときに「ダメ。ゼッタイ。」というキーワードが浮かんでくるが、小説中のような状態が得られるのであれば、体という代償を払ってでも服用に価値を見い出せると思う。特にエックスに関しては中毒性もある程度低いのではないか。そこまで思わせるような麻薬の描写だ。
また、SMの描写も羨ましいと思わせる強烈な内容である。一度体験してみたいなと本気で思わせる。

 一回目にはあまり着目していなかったが、最後にミヤシタが破滅に向かう途中で様々な情景がフラッシュバックする場面がある。段々句読点が無くなっていき最後に句読点なしで一気に進む文があるが、なんというか流れというのか、とにかくすばらしい描写であった。脳内でビートが刻まれていったように感じた。

 この小説は三部作のうちの一つであることをネットから知った。残りの「メランコリア」「タナトス」が早く読みたいが、その前に「O嬢の物語」を読まなければ。
【ランク】7.5
【読書中メモの総覧】なし
【備考】二回目。2009年9月30日に読み終えた。再読を促す。

2009/09/16

ノルウェイの森 上・下(村上春樹)





【タイトル】ノルウェイの森 上・下
【著者名】村上春樹
【発行年月日(初版)】1991年4月15日(文庫)上・下
【登場人物の年齢層】大学生
【概略】暗く重たい雨雲をくぐり抜け、飛行機がハンブルグ空港に着陸すると、天井のスピーカーから小さな音でビートルズの「ノルウェイの森」が流れ出した。僕は 1969年、もうすぐ20歳になろうとする秋のできごとを思い出し、激しく混乱していた。——限りない喪失と再生を描き新境地を拓いた長編小説。(著者からの内容紹介)上/あらゆる物事を深刻に考えすぎないようにすること、あらゆる物事と自分の間にしかるべき距離を置くこと—。あたらしい僕の大学生活はこうして始まった。自殺した親友キズキ、その恋人の直子、同級生の緑。等身大の人物を登場させ、心の震えや感動、そして哀しみを淡々とせつないまでに描いた作品。(「BOOK」データベースより)
【感想】村上春樹作品に挑戦。
 予想以上に読みやすくて驚いた。今まで村上春樹作品は言い回しが多くて読みにくい、という印象があったが、この作品はそんなことはなく、上下あわせて二日ほどで読み終えてしまった。
 内容は大学生の恋愛物語である。この作品の主人公であるワタナベはかなりクールといえばいいのか、よくありそうな「大学生ライフを楽しむぞ!」という感じの大学生ではなく、冷淡な感じの大学生である。「…僕はそれほど強い人間じゃありませんよ。誰にも理解されなくていいと思っているわけじゃない。理解しあいたいと思う相手だっています。ただそれ以外の人々にはある程度理解されなくても、まあこれは仕方ないだろうと思ってるだけです。あきらめているんです。」というような人物である。喪失というキーワードのもと、親友や恋人を亡くす哀しみや、生活していくなかでの思いが綴られている。

 正直この作品は感想が難しい。読了後思ったことは多々あるが、文章にすることができない。それは未熟な国語の能力のせいでもあるが、感想がぼんやりしているのだ。試みたものの、いまいちしっくり来ない。ただこれまで読んだなかでかなり優秀な作品であることは間違いないのだが。もどかしい。とか言っているがまあ逃げですね。
主人公がフィッツジェラルドの「グレート・ギャツビー」を愛読していたので、読んでみたいと思う。
【ランク】7
【読書中メモの総覧】予想以上に読みやすい/憧憬
【備考】2009年9月15日に読み終えた。

2009/09/12

動物農場(ジョージ・オーウェル 高島文夫訳)☆


【タイトル】動物農場
【著者名】ジョージ・オーウェル
【訳者名】高島文夫
【発行年月日(初版)】1972年8月30日
【登場人物の年齢層】-
【概略】一従軍記者としてスペイン戦線に投じた著者が見たものは、スターリン独裁下の欺瞞に満ちた社会主義の実態であった…。寓話に仮託し、怒りをこめて、このソビエト的ファシズムを痛撃する。(「BOOK」データベースより)
【感想】朝日新聞の別刷りの書評を読んでこの本を読もうと思い、今回図書館より借りて読んでみた。
 表題作である「動物農場」は寓話の形式をとったスターリン体制に対する強烈な風刺である。私は今までなにかを風刺した作品を読んだ記憶があまりないので、風刺というものがどのような感じの物語なのかイマイチよく分からなかったが、今回この作品を読んだことで風刺というものがどういうものか理解した。
 まず最初に読んでいて思ったことは、独裁体制がどのようにしてでき、いかに恐ろしいものであるかということである。特に罪を名乗り出た動物がその場で処刑される場面は引きずり込まれると同時に身の毛もよだつ思いがした。
 また、革命というものの安易さである。今まで私は民衆による革命は必ずといってもいいほど状況がよくなり、よい結果をもたらすと思っていたが、「動物農場」のように結果的に大して変わらないということもあり得るのだな、と思った。また、今まで優秀なリーダーが一人いれば国は必ずいい方向に導いてくれる、という考えが自分の中にあった。しかし、考えてみれば甚だ愚考で、そのような状況は独裁政治につながりやすいことも分かった。考えを改めなければ。
 前述の通り、「動物農場」は強烈な風刺である。各々の登場人物は実在の人物に当てはめることが出来る。例えば革命を予言したメージャー爺さんはレーニン、革命後に独裁者となったナポレオンはスターリン、元々の農場の持ち主であるジョーンズ氏はロシア皇帝…と。また、違った対応関係も当てはめることが出来ると解説で述べられている。
 私はスターリン体制の時のロシアの状況をよく知らないのだが、解説によってある程度把握した。この先この時代のロシアの情勢を学習することでより一層楽しめると思う。

 ロシア革命を風刺した極めて秀逸な寓話であった。解説に「動物農場」後を描いたジョージ・オーウェルの作品に「1984」があるらしいので、読んでみたいと思う。解説にジョージ・オーウェルは行動の作家であると述べられている。現に、自分が現地に赴き見聞きし体験した事を物語にしている。この本にもいくつか収録されていた。その点でもすごいな、と思った。
【ランク】7.5+α
【読書中メモの総覧】独裁の恐怖 身の毛もよだつ 行動の作家
【備考】2009年9月11日に読み終えた。再読を促す。

2009/09/07

時をかける少女(筒井康隆)


【タイトル】時をかける少女
【著者名】筒井康隆
【発行年月日(初版)】1976年2月28日初版(文庫)
【登場人物の年齢層】高校生
【概略】放課後の誰もいない理科実験室でガラスの割れる音がした。壊れた試験管の液体からただようあまい香り。このにおいをわたしは知っている—そう感じたとき、芳山和子は不意に意識を失い床にたおれてしまった。そして目を覚ました和子の周囲では、時間と記憶をめぐる奇妙な事件が次々に起こり始めた。思春期の少女が体験した不思議な世界と、あまく切ない想い。わたしたちの胸をときめかせる永遠の物語もまた時をこえる。(「BOOK」データベースより)
【感想】細田守が監督を務めた映画「時をかける少女」の原作である。
 文章を読んでなんとなく昭和な感じの学生の印象を受けたから発行年を見たら初版が昭和51年2月28日と書かれているではないか。昭和51年といえば1976年になる。そんなに古い小説であったのか と驚いた。
 内容については、話の内容は違うので直接比べるのは筋違いかもしれないが、正直なところ細田守監督のアニメ映画の方がいい。新装版の文庫は238ページあるのだが、「時をかける少女」が占める ページは115ページ。文庫の半分しか話がなく、短すぎる。あっという間に終わってしまうので、物足りないのである。時代が古いのに対しアニメ映画の方が現代で受け入れやすいからというのもあるかもしれない。
 Wikipediaによると、原作は1967年に出ているようである。また、『筒井の作品には珍しい、正統派ジュブナイルである。発表から40年以上たった現在でも広く親しまれており、何度も映像化されている。ただし、筒井自身は児童向き作品が資質に合わなかったようで、当時の日記(『腹立半分日記』に収録)で、「書くのが苦痛でしかない」といったことを書いている。』と書かれており、またこの作品を代表作のひとつと思われている事に嫌悪しているらしい。
 とりあえずもう一度映画を見るか。
【ランク】5
【読書中メモの総覧】なし
【備考】2009年9月6日に読み終えた。

2009/09/06

スカイ・イクリプス Sky Eclipse (森博嗣)


【タイトル】スカイ・イクリプス Sky Eclipse
【著者名】森博嗣
【発行年月日(初版)】2009年2月文庫版
【登場人物の年齢層】-
【概略】空で、地上で、海で。「彼ら」は「スカイ・クロラ」の世界で生き続ける。憧れ、望み、求め、諦めながら—。さまざまな登場人物によって織りなされる八つの物語は、この世界に満ちた謎を解く鍵となる。永遠の子供、クサナギ・スイトを巡る大人気シリーズ、最初で最後の短編集。(「BOOK」データベースより)
【感想】「スカイ・クロラ」シリーズ第六巻。この作品が最終巻となる。この作品は8つの短編集となっており、時系列でいってもバラバラである。さらにこのシリーズで登場した様々なキャラクターの視点に基づいて描かれている。
 私は特にティーチャの視点から描かれた「Nine Lives」が気に入った。文中でティーチャとは明言されていないが、ほぼティーチャであると推測できる。地上のしがらみを抜け出し空へ飛ぶ場面はなんというか清々しく羨ましい。
 この飛んでいるときの描写や心情描写として用いられる文体、即ち短い文章もしくは単語の連続体は、最初の頃は違和感を感じたものの、今では心地よいビートのように馴染んでいる。これは好き嫌いが別れると思うが、おそらく「スカイ・クロラ」シリーズが好きである人であればこの文体も好きである場合が多いと思う。
 また、最後の短編である「Ash on the Sky」これはキルドレではなくなったクサナギがフーコに会いに行くという場面である。時系列でいうとシリーズのいちばん最後に当たる短編であるが、文中にバス停でフーコとクサナギが別れたと言っている。こうなるといよいよ「クレィドゥ・ザ・スカイ」の「僕」がクサナギである可能性が高くなる。
 ネット上の考察を見てみると、さまざまな考察がなされている。よく見かけるのは誰々は誰々の生まれ変わりである、といった考察だ。正直言って飛躍しているような気がするが、しかしそうでもしないと説明がつかないのである。一人称の視点が誰なのか、というミステリーは初めてである。(そもそもミステリー小説をあまり読まないのだが)
 そのようなミステリーはとりあえず置いといて、この作品はシリーズの話を補足する意味でも重要度が高いと思う。
 総評で総合的な考察をしたいと思う。
【ランク】-
【読書中メモの総覧】-
【備考】2009年9月2日に読み終えた。

2009/09/02

クレイドゥ・ザ・スカイ Cradle the Sky(森博嗣)


【タイトル】クレイドゥ・ザ・スカイ Cradle the Sky
【著者名】森博嗣
【発行年月日(初版)】2008年4月15日初版
【登場人物の年齢層】-
【概略】今だけがあって、それだけを考えていられたら良いのに。未来だって、せいぜい明日か明後日くらいしかなければ良いのに—「僕」は病院を抜け出し「彼女」の車で地上を逃げる。二度と空には、戦闘機には戻れないと予感しながら。永遠の時を生きる子供たちを描く、現代の寓話「スカイ・クロラ」シリーズ。
【感想】「スカイ・クロラ」シリーズ第五作目。時系列で言うとこの作品の次が「スカイ・クロラ」となる。
本作の僕が久しぶりに乗り慣れた戦闘機である散香を見たときや乗ったときの喜びぶりが印象的だった。
この作品は最後のエピローグで大きな謎が生じた。本作の「僕」が誰を指しているのか分からなくなってしまった。最初に病院にいたり、フーコと共に病院を抜け出したりするなどから前作「フラッタ・リンツ・ライフ」と同じクリタジンロウだと思っていたのだが、最後に記者の杣中にカンナミと呼ばれているのだ。また、この「カンナミ」は杣中にクサナギに似ていて、さらにクサナギスイト本人は記者曰くクサナギとは別人であると言っている。
他にもこの記者は戦闘機四機を撃墜したのはクサナギスイトだと言ってまでもいる。もし事実であるならば病院から逃亡した本作の僕はクサナギスイトになってしまう。流石にそれは文中にクサナギスイトに銃で射殺される幻覚を見る描写があるため可能性としては低いと思うが、しかし、科学者の相良は「あなたは、キルドレに戻った。」と僕に対して言っているのだ。(おそらく)前作でクサナギスイトはキルドレではなくなっていることが分かっているため、この事を考えると、クサナギスイトが本作の僕の可能性は否定できない。訳が分からない。

この謎はネット上でも話題になっていて、至るところで考察がされているのが見て受け取れた。まだ「スカイ・イクリプス」を読んでいないのでネット上の考察を精読するのは避けるが、「スカイ・イクリプス」を読んでもなお分からないのであれば精読してみるか。

それにしても作者の森博嗣はミステリー作家だったのか。全く知らなかった。シリーズ最終刊の「スカイ・イクリプス」に期待。
【ランク】-
【読書中メモの総覧】-
【備考】2009年8月28日に読み終えた。