2010/11/20

春狂い(宮木あや子)

【タイトル】春狂い
【著者名】宮木あや子
【発行年月日(初版)】2010年5月10日
【登場人物の年齢層】中学から高校生
【概略】生まれながらにして、人を狂わすほどの美しさを内包していた一人の少女。男たちの欲望に曝され、身体を穢された美少女が、桜咲く園で望んだ未来とは―。窓の外で桜の花びらが突風に巻き上げられている。放課後の教室、私は教師の前でスカートをたくしあげる。「私をあと二年、守ってください」。制服の下に隠された、傷だらけの少女の秘密。(「BOOK」データベースより)
【感想】おそらく新聞の広告を見たのがきっかけである。


 一通り読み終えて、これは一度読んだだけじゃだめだな、と思わせるほど心情の表現が豊かであった。


 著者紹介のところに書かれてあるとおり、鮮烈な官能表現が特徴的である。その官能表現を通じて、憎しみや哀しみ、愛情を描いていると思う。


 短編集の形をとっているが、各話は繋がっている。特に、少女が主人公として登場する回は凄惨たる展開である。少女が虐げられ、また虐げる描写から……なんと表現したらよいのか。
【ランク】7
【読書中メモの総覧】なし
【備考】2010年10月16日に読み終えた。再読を促す。

2010/11/19

ケータイ小説は文学か(石原千秋)


【タイトル】ケータイ小説は文学か
【著者名】石原千秋
【発行年月日(初版)】2008年06月10日初版
【登場人物の年齢層】-
【概略】ケータイ小説を大胆にも文学として認め、その構造を徹底分析。小説の「読み」「書き」に起こる異変を解きあかしポスト=ポスト・モダンという新しい境地を見出す刺激的アプローチ。(「BOOK」データベースより)
【感想】図書館の新書コーナーを見ていて偶然見つけたのがきっかけ。


 興味がないので未だケータイ小説というものを読んだことはない。よく2ちゃんねるで「美嘉」の概略が書き込まれているのを読んでいたので概略は知っていたが。


 石原千秋は本書において有名なケータイ小説の概略を示し、それを二項対立などを用いて構文解析したり、ケータイ小説に共通する「アイテム」を示すことで、「ケータイ小説」というものを読み解いた。


 最近では、ブームが沈静化し、話題に昇ることが減ったなと思うのもこの本を読めば説明がつくと思う。要するに、「ケータイ小説」は展開が似かよってしまう傾向にあるから、飽きてしまったのではないのかと推測がつく。バリエーションが少ないのである。


 この本はほぼ最後まではあまり難しくないのだが、最後でポスト=ポストモダンという単語が登場するところは結構難解というか、あまり説明しようというスタンスが見えない。ちくまプリマー新書は易しいという印象が崩れてしまった。


 書いていて思ったが新書などの評論文は感想と同時に要約も必要だなと感じた。今更読み返して要約する気はさらさらないが、これからは要約も意識してみようかと思った。
【ランク】-
【読書中メモの総覧】-
【備考】2010年11月17日読了

2010/11/16

「それでも私は犯人を恨まない」…(by エル・ムンド)


クーリエ2010年11月号より

監禁した犯人は電車に飛び込んで自殺してしまっているので犯人の今の心境は聞けないが、監禁でも8年も経過するとこのような心境になるのだろうか、記事中にも指摘されているがこの記事を読んで真っ先にストックホルム症候群という単語が浮かんだ。

しかしやはり監禁の目を抜け出して駄出すると言うことは、自分の現状に満足していない証拠だよな、と思った。(きわめて当たり前だが……)

少女ノイズ(三浦岳斗)


【タイトル】少女ノイズ
【著者名】三雲岳斗
【発行年月日(初版)】2010年4月20日
【登場人物の年齢層】高校生~大学生
【概略】欠落した記憶を抱え、殺人現場の写真に執着を持つ青年と、心を閉ざして、理想的な優等生を演じつづける孤独な少女。進学塾の屋上で出会った二人が見つめる恐ろしくも哀しい事件の真実とは何か?そして、少女のつけた巨大なヘッドフォンのコードは、どこにつながるのか?冷徹なまでに美しい本格の論理で解かれる最大の謎は、エンドロールのあとの二人の未来―。
【感想】ジャケ買い。


 短編5つからなるミステリー系小説だが、解説にも述べられているとおり正直ミステリー部分はおまけみたいなもので、むしろ主人公である大学生と瞑と呼ばれる高校生のやりとりの方がメインみたいなものだ。


 まあジャケ買いなのであまり期待はしていなかったが、こんなものだろう。ミステリー小説の中では結構読みやすい分類に入るが、やや物足りなさも目立った気がする。正直ミステリーの部分を廃して二人のやりとりに集中すればもっといいなと思ったが、それでは文章中に絵がないライトノベルと大差ないような気もする。(あまりライトノベルを読まないので印象からでしかないが・・・)
【ランク】4.5
【読書中メモの総覧】なし
【備考】2010年11月16日に読み終えた

2010/11/14

俺俺(星野智幸)

【タイトル】俺俺
【著者名】星野智幸
【発行年月日(初版)】2010年6月30日
【登場人物の年齢層】大学生~30代
【概略】マクドナルで隣り合わせた男の携帯電話を手に入れてしまった俺は、なりゆきでオレオレ詐欺をしてしまった。そして俺は、気付いたら別の俺になっていた。上司も俺だし母親も俺、俺でない俺、俺ではない俺、俺たち俺俺。俺でありすぎてもう何が何だかわからない。電源オフだ、オフ。壊ちまうす。増殖していく俺に耐えきれず右往左往する俺同士はやがて―。孤独と絶望に満ちたこの時代に、人間が信頼し合うとはどういうことか、読む者に問いかける問題作。(「BOOK」データベースより)
【感想】朝日新聞の書評欄より。


 通読して率直に思ったのは「カオスな作品だな」という印象である。登場人物が次々に「俺」化していく様子は最初は面白いなと思ったものの、だんだん増殖していくに従って恐怖が芽生えてきた。


 もちろん設定などにいろいろ突っ込むことができるかもしれないが、それを凌駕するほどの物語の展開だったと思う。途中この主人公がどういうような環境で、どういう家族構成を持っていたかが混同しだんだん自分というものがわからなくなっていく様子には混乱し変な気持ちになっていった。たまにはこういう不思議な小説を読むのも悪くはないと思う。


 朝日新聞の書評では、『派遣労働などが一般化し、個の固有性が希薄化する現代日本社会。入れ替え可能な個の群れが出現し、アイデンティティーを保つことが難しくなっている。俺が俺である必要性は果たしてあるのか? 俺は本当に他者から承認されて生きているのか?そんな不安ゆえに、人は他者とつながりたい。心と心で結びつき、互いに必要とし合う関係を築きたい。しかし、それが行き過ぎると、自己と他者との区別がつかなくなる。自己のアイデンティティーは他者の群れの中に溶解し、全体へと回帰する。本作は、現代社会の状況と普遍的な人間のアイデンティティーの問題に迫った現代文学の金字塔だ。今まさに存在の不安に押しつぶされそうな人は、ぜひ読んでほしい。全体主義やファシズムの「危うい魅力」に関心がある人にとっては、必読の作品。』と紹介されている。なるほど、この小説はこのようにも読むことができるのかと頷いた。


 著者のブログやtwitterを読んでみると世間や、社会状況に対して深く考察しているのが見受けられた。いろいろ踏まえてこの小説のことを回想すると、この小説は結構深いことを考察し、風刺しているんだな。


 書評を執筆しているのが中島岳志氏で、「クーリエ・ジャポン」においてインドに関する記事をよく見かけるのを思い出した。意外なところで繋がっているものだ。
【ランク】6+α
【読書中メモの総覧】なし
【備考】2010年11月13日に読み終えた。

2010/11/08

弟の戦争(ロバート・ウェストール、原田勝訳)


【タイトル】弟の戦争
【著者名】ロバート・ウェストール
【訳者名】原田勝訳
【発行年月日(初版)】1995年11月30日初版
【登場人物の年齢層】中学生~高校生
【概略】ぼくの弟フィギスは、心の優しい子だった。弱っている動物や飢えた難民の子どもの写真なんか見ると、まるでとりつかれたみたいになって、「たすけてやってよ」って言う。人の気持ちを読みとる不思議な力も持っている。そんな弟が、ある時奇妙な言葉をしゃべりだし、「自分はイラク軍の少年兵だ」と言い始めた。フィギスは12歳。1990年、湾岸戦争が始まった夏のことだった…。弟思いの15歳の兄が、弟を襲った不思議な事件を語る、迫力ある物語。イギリスで子どもの読者が選ぶ賞を複数受賞、ヨーロッパ各国でも話題を呼んだ作品。シェフィールド児童文学賞受賞、ランカシャー州児童書賞第1位、イギリス児童書連盟賞部門賞受賞、カーネギー賞特別推薦、ウィットブレッド賞推薦。小学校中・高学年~。(「BOOK」データベースより)
【感想】小学生の頃読み、久しぶりにもう一度読んでみたくなったのがきっかけ。


 湾岸戦争をメインテーマとしており、主人公の弟がイラクの少年兵と人格を共有、むしろ少年兵の人格が弟に影響を及ぼしていく物語。


 区分上は児童文学に含まれるだろうが、身近な人間が戦争の影響を受けることによる戦争の悲惨さ、さらに(これは予想外だったが)アラブ人の精神科医を登場させることによる人種差別の問題にも踏み込んでいる、児童文学のジャンルに収まらない難しい内容を扱っていた。


 多分これを最初に読んだ頃はおそらく(というかほぼ確実に)ここまで深く意識しなかっただろう。まあ年齢を重ねれば思考が深くなるのは当然であるが……


 正直、この本を小学生が読んで、理解できるのかと思ってしまうのは舐めすぎているだろうか。
【ランク】6.5
【読書中メモの総覧】なし
【備考】2010年11月08日読了

2010/11/06

Cross Days ~重ねる嘘、重なる想い~(秋月 ひろ)


【タイトル】Cross Days ~重ねる嘘、重なる想い~
【著者名】秋月 ひろ
【原作】オーバーフロー
【発行年月日(初版)】2010年10月27日発行
【登場人物の年齢層】高校生
【概略】伊藤誠からの突然の告白で、誠を意識し始めた桂言葉―。ふとしたキッカケで足利勇気に恋をしてしまった喜連川路夏―。2人の想いは募るばかりで、いつも遠回り…。そんな2つの不器用な恋愛が、いつしか交錯して、誤解、嫉妬を生んでいく―。大ヒットPCゲームが小説版となって登場。(「BOOK」データベースより)
【感想】友人より。


 「School Days」の世界観や登場人物をそのままにして焦点を変えたエロゲーのノベライズ版である。


 まあ他のエロゲーのノベライズと大差ないが、登場人物が多く話もそこそこ複雑で楽しめた。


 ただ、エロゲーのノベライズだからしょうがないかもしれないが各々の描写に捻りがない。特にセックスシーンは妙に生々しく、邪魔である。最後喜連川と勇気の描写には少々げんなりさせられた。普通に終わればより良かったと思う。
【ランク】5.5
【読書中メモの総覧】-
【備考】2010年11月06日読了