2009/04/29

ゴールデンスランバー(伊坂幸太郎)


【タイトル】ゴールデンスランバー
【著者名】伊坂幸太郎
【発行年月日(初版)】2007年11月30日
【登場人物の年齢層】成人
【概略】首相の暗殺の犯人に仕立て上げられた主人公青柳が逃亡する出来事を様々な時間軸や視点から追った物語(by me)/仙台で金田首相の凱旋パレードが行われている、ちょうどその時、青柳雅春は、旧友の森田森吾に、何年かぶりで呼び出されていた。昔話をしたいわけでもないようで、森田の様子はどこかおかしい。訝る青柳に、森田は「おまえは、陥れられている。今も、その最中だ」「金田はパレード中に暗殺される」「逃げろ!オズワルドにされるぞ」と、鬼気迫る調子で訴えた。と、遠くで爆音がし、折しも現れた警官は、青柳に向かって拳銃を構えた―。精緻極まる伏線、忘れがたい会話、構築度の高い物語世界―、伊坂幸太郎のエッセンスを濃密にちりばめた、現時点での集大成。(「BOOK」データベースより)
【感想】惜しい。この一言に尽きる。本や大賞を受賞したこの作品は、「死神の精度」が面白かった事から、「この作品はきっと面白い」と思いつつ読んだのだが、最初の方で時間がかかった。読んでいてつまらなかったのである。読み終えると最初の方は重要な伏線となっているのに気づくのだが。
 この作品のクオリティは非常に高い。ただ、面白い本に起きる「躍動感」すなわち次の展開が気になる、早く続きを読みたい、といった感情が起こらず、むしろ「やっと半分か」などの感情の方が大きかった。
 理由を考えてみると「首相公選」がリアリティを失っている原因となり、その結果躍動感がなくなったのかな、とも思ったが理由の一つではあるけれどメインではないようにも思える。
 今のところ躍動感がない理由が浮かばないが、「おもしろかった小説」にはならなかった。
【ランク】6.5
【読書中メモの総覧】▼若干のリアリティを失っている▼最初はつまらない▼時間軸が頻繁に動く
【備考】2009年4月29日に読み終えた。

2009/04/25

アレグリアとは仕事はできない(津村記久子)


【タイトル】アレグリアとは仕事はできない
【著者名】津村記久子
【発行年月日(初版)】2008年12月10日
【登場人物の年齢層】成人
【概略】「アレグリア」という複合機に芽生える主人公ミノベの憎悪や、アレグリアによって浮かび上がる人間関係や出来事を綴った物語。満員電車に乗っている乗客の心理や出来事を綴った「地下鉄の叙事詩」も収録(by me)
【感想】コピー機を巡ってこんな物語が展開されるとは思っていなかった。正直タイトルにつられて読んだのだが、予想以上に面白い。ちゃんと起承転結に乗っ取っている。が、「地下鉄の叙事詩」は微妙。読むのに時間がかかった。
【ランク】5
【読書中メモの総覧】なし
【備考】2009年4月25日に読み終えた。

2009/04/21

エクスタシー(村上龍)☆


【タイトル】エクスタシー
【著者名】村上龍
【発行年月日(初版)】1995年4月25日(文庫)
【登場人物の年齢層】20〜30代
【概略】ニューヨークでホームレスをしているヤザキとカタオカケイコ、レイコによる麻薬とセックスを絡めた快楽の話と主人公のミヤシタによる物語(by me)/「ゴッホがなぜ耳を切ったか、わかるかい」とそのホームレスの男は僕に日本語で話しかけてきた。ニューヨーク、ダウンタウンのバウアリー。男は、「ここに電話してオレと会ったことを言えば、お金を貰えるよ」と紙切れをくれた。東京のケイコと、パリのレイコと男、恍惚のゲームは果てしなく繰り返される。国際都市を舞台に、人間の究極の快楽を追求した長編小説。(「BOOK」データベースより)
【感想】タイトルと後ろのあらすじから想像していたが、予想以上にエロい(?)。正直エロいとかエロスとかそういう表現は適していないように思えるのだが、語彙が少ないので仕方がない。ここまでドラッグとセックス、それもSM系で、ここまで踏み込んでいるのは読んだ事がない。なんというか人間の快楽って奥深いな・・・としかいいようがない。この本の感想は語彙が少なすぎて表す事ができないのが現状である。
村上龍の書いた本を読むのはこれが初めてだが、もっと他の作品も読みたくなるほど引きつけられた。
【ランク】7.5
【読書中メモの総覧】▼ダウナー系▼ニンフォマニア▼セクレタリー▼ソフィスティケイト
【備考】2009年4月21日に読み終えた。再読を促す。

2009/04/15

夢を与える(綿矢りさ)


【タイトル】夢を与える
【著者名】綿矢りさ
【発行年月日(初版)】2007年2月28日
【登場人物の年齢層】〜浪人生
【概略】芸能界に入った主人公が徐々に堕ちていく物語(by me)/私は他の女の子たちよりも早く老けるだろう。チャイルドモデルから芸能界へ―幼い頃からTVの中で生きてきた美しくすこやかな少女・夕子。ある出来事をきっかけに、彼女はブレイクするが…少女の心とからだに流れる18年の時間を描く。芥川賞受賞第一作。 (「BOOK」データベースより)
【感想】主人公が落ちぶれていく物語は久しぶりに読んだ気がする。芸能界に入った主人公の心情の変化や周りの人たちの様子が書かれていて面白い。だが、結末が何とも言えない。落ちぶれ方が微妙というかかなり曖昧な感じに終わってしまったのでもうちょっとそのあたりを読みたかった。まあこの物語の主体を考えればあまり必要のないのかもしれないが・・・
【ランク】6.5
【読書中メモの総覧】なし
【備考】2009年4月12日に読み終えた

2009/04/09

人のセックスを笑うな(山崎ナオコーラ)


【タイトル】人のセックスを笑うな
【著者名】山崎ナオコーラ
【発行年月日(初版)】2006年10月20日(文庫)
【登場人物の年齢層】19&39
【概略】19歳の主人公オレと39歳のユリによる恋愛物語(by me)/9歳のオレと39歳のユリ。恋とも愛ともつかぬいとしさが、オレを駆り立てた…美術専門学校の講師・ユリと過ごした日々を、みずみずしく描く、せつなさ100%の恋愛小説。「思わず嫉妬したくなる程の才能」など、選考委員に絶賛された第41回文藝賞受賞作/芥川賞候補作。短篇「虫歯と優しさ」を併録。 (「BOOK」データベースより)
【感想】以前映画の宣伝を思い出して買ってみたのだが、まあ恋愛物語だな・・としか読後の感想が浮かばなかった。ただ文章の印象がとても柔らかい感じがしたようにも思える。
【ランク】5.5
【読書中メモの総覧】なし
【備考】2009年4月9日に読み終えた

2009/04/06

天才たちの値段(門井慶喜)


【タイトル】天才たちの値段
【著者名】門井慶喜
【発行年月日(初版)】2006年9月15日
【登場人物の年齢層】成年
【概略】短大の美術の講師である主人公佐々木昭友が美術における天才神永未有と出会い、様々な美術の問題を解こうとする物語。(by me)/子爵の屋敷の地下室に秘蔵されていた巨匠ボッティチェッリ作「秋」。これは世紀の大発見か、罪深き贋作なのか? 鑑定眼ならぬ「鑑定舌」で真贋を見きわめる天才美術探偵、神永美有が活躍する美術ミステリー。 (「MARC」データベースより)
【感想】普段推理小説は読まない私だがこういう美術の謎解き、推理にハラハラした。最初の短編のハラハラ度がとてつもなかった。美術の専門的な話がやや難しいものの、しっかり読めばついていけるレベルであり、久々に濃い内容の小説に出会ったと思う。丁寧な話の展開なので、違う作品も読んでみようと思う。
【ランク】7
【読書中メモの総覧】▼美術の専門的な話がやや難しい▼最初の短編の推理的なものにハラハラしてしまった▼精読できていない▼最後の話がいちばん難しい気がするが終わり方がきれい
【備考】2009年4月6日に読み終えた

蛇にピアス(金原ひとみ)


【タイトル】蛇にピアス
【著者名】金原ひとみ
【発行年月日(初版)】2004年1月10日
【登場人物の年齢層】18付近
【概略】ピアッシングや刺青などの身体改造を題材に、現代の若者の心に潜む不気味な影と深い悲しみを、大胆な筆致で捉えた問題作である。埋め込んだピアスのサイズを大きくしていきながら、徐々に舌を裂いていくスプリットタン、背中一面に施される刺青、SM的なセックスシーン。迫力に満ちた描写の一方で、それを他人ごとのように冷めた視線で眺めている主人公の姿が印象的だ。第130回芥川賞受賞作品。
顔面にピアスを刺し、龍の刺青を入れたパンク男、アマと知り合った19歳のルイ。アマの二股の舌に興味を抱いたルイは、シバという男の店で、躊躇(ちゅうちょ)なく自分の舌にもピアスを入れる。それを期に、何かに押されるかのように身体改造へとのめり込み、シバとも関係を持つルイ。たが、過去にアマが殴り倒したチンピラの死亡記事を見つけたことで、ルイは言いようのない不安に襲われはじめる。
本書を読み進めるのは、ある意味、苦痛を伴う行為だ。身体改造という自虐的な行動を通じて、肉体の痛み、ひいては精神の痛みを喚起させる筆力に、読み手は圧倒されるに違いない。自らの血を流すことを忌避し、それゆえに他者の痛みに対する想像力を欠落しつつある現代社会において、本書の果たす文学的役割は、特筆に価するものといえよう。弱冠20歳での芥川賞受賞、若者の過激な生態や風俗といった派手な要素に目を奪われがちではあるが、「未来にも、刺青にも、スプリットタンにも、意味なんてない」と言い切るルイの言葉から垣間見えるのは、真正面から文学と向き合おうとする真摯なまでの著者の姿である。(中島正敏)
【感想】「オートフィクション」を先に読んだので、これも「オートフィクション」と同じように支離滅裂という感じの文章なのかなと思っていたが自分としてはこっちの方が読みやすく、また痛みをうまく表されていて面白い。ただなんというかwikipediaに『選考委員の石原慎太郎は受賞作発表後の記者会見において、この回の候補作全体に対して否定的見解を示して「今年は該当作無しでも良かったんじゃないか」と前置きした上で、それでも同時受賞した2作品・「蹴りたい背中」(綿矢りさ著)、「蛇にピアス」からいずれかを選ぶならば「蛇にピアス」を推すとしている』としているが私としては「蹴りたい背中」の方が秀逸だと思う。また、アマゾンに書評が載っており概略として引っ張ってきたが、これは少々読み解き過ぎではないかと思う。あと終わり方が少々味気ない気がするが、どうやら単行本にするにあたり改変されたようで、改変される前の結末の要約を読んだがこちらのほうが良い気がする。
【ランク】6
【読書中メモの総覧】▼芥川賞は真っ当なテーマばかりじゃないんだ▼終わり方
【備考】2009年4月6日に読み終えた

2009/04/03

ぼくは勉強ができない(山田詠美)


【タイトル】ぼくは勉強ができない
【著者名】山田詠美
【発行年月日(初版)】1996年3月1日(文庫)
【登場人物の年齢層】高校生
【概略】ぼくは確かに成績が悪いよ。でも、勉強よりも素敵で大切なことがいっぱいあると思うんだ―。17歳の時田秀美くんは、サッカー好きの高校生。勉強はできないが、女性にはよくもてる。ショット・バーで働く年上の桃子さんと熱愛中だ。母親と祖父は秀美に理解があるけれど、学校はどこか居心地が悪いのだ。この窮屈さはいったい何なんだ。凛々しい秀美が活躍する元気溌刺な高校生小説。(「BOOK」データベースより)
【感想】山田詠美作品の中でいちばん好きな作品となった。主人公が高校生で男であり、他の作品と違って男と女のつながり以外にも焦点を当てている。学校という場が舞台になっているので主人公に気持ちを入れやすいというのも一因。
 この主人公である時田秀美になんとなく憧れてしまうのである。勉強が主な進学校にいる私にとって、おそらく経験する事のない高校生ライフであるし、また、この主人公の性格自体にも自分がなりたいなと願望を抱いている性格だからかもしれない。
 この本を読むのは二回目だが、やはり飽きというものがこない。多分私が高校生になっているときにまた読むんじゃないかなとも思う。
【ランク】7
【読書中メモの総覧】なし
【備考】2009年4月2日に読み終えた(二回目)

2009/04/01

教室へ(フランソワ・ベゴドー)


【タイトル】教室へ
【著者名】フランソワ・ベゴドー
【訳者名】秋山研吉
【発行年月日(初版)】2008年12月25日
【登場人物の年齢層】中学生
【概略】フランスのコレージュ(日本の中学校にあたる)を舞台に出来事を綴った小説(by me)/2008年カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞映画原作小説。パリ市内の中学校で教師をしている私は、日々ストレスを募らせていた。私語や反抗が目立つ生徒、妨害される授業、学力格差、校内暴力、人種間の対立など、次々と難題が持ち上がるが、解決の糸口はまったく見えてこない―教育現場の現実をセンセーショナルに描き、フランスでベストセラーを記録したドキュメンタリー・ノヴェル。ラジオ局フランス・キュルチュールと雑誌「テレラマ」共催の文学賞を受賞。 (「BOOK」データベースより)
【感想】図書館の新刊本コーナーに置いてあって裏表紙に書かれてあるあらすじが面白そうなので読んでみたが、ただただコレージュの出来事を綴ってあるだけで何が面白いのかが分からない。フランスでベストセラーとなったらしいが、コレージュの様子を知りたいのならまだしも、多分フランス人以外には(というかコレージュの実際の様子を知らない者)つまらないとしか思えない。訳者あとがきに「だから私は教育の中枢だけに集中する事にしました。それは教室です。教室で日々起こる事をひたすら綴るのです」「ちょっとした場面の積み重ねを通じて、学校と社会の断絶をあぶり出そうとしました」と著者が言っていると書かれてあるが、やはり現状を知らないものにはつまらない。
【ランク】3.5
【読書中メモの総覧】▼アフォリズム▼分かりづらい▼謝罪を強制▼スケーター、スノップ
【備考】2009年4月1日に読み終えた。