2009/07/30

宿命(東野圭吾)


【タイトル】宿命
【著者名】東野圭吾
【発行年月日(初版)】1993年7月15日
【登場人物の年齢層】成年
【概略】高校時代の初恋の女性と心ならずも別れなければならなかった男は、苦闘の青春を過ごした後、警察官となった。男の前に十年ぶりに現れたのは学生時代ライバルだった男で、奇しくも初恋の女の夫となっていた。刑事と容疑者、幼なじみの二人が宿命の対決を果すとき、余りにも皮肉で感動的な結末が用意される。(「BOOK」データベースより)
【感想】この本を読もうと思ったきっかけは、今まで本棚にあったものの、推理小説は読むのがめんどくさいという印象から全く手を付けていなかったこの本だが,今回読む本がなくてこの本を読んだ。結果は予想通り丁寧に書かれてあるだけ、クオリティが高いだけの普通の本だった。これは推理小説やミステリーには仕方がのないことなのかもしれないが,設定がリアリティに欠ける。因縁の相手が二卵性双生児だった、昔愛していた彼女が因縁の相手の妻だったetc・・・などあり得ないとしかいいようがないし、展開がある程度読めてしまうというもの問題である推理小説はハラハラドキドキが醍醐味ではないのか。また、これが一番重要視しているのだが、読み終えた後に「オチはこうだったんですね」という印象ばかりで、何も残らなかったのである。これは自分の感受性が低いからだと思っているが、実際のところ自分以外の人々はどうなのだろうか。
 今回おそらく初めて正統派(だと自分は思う)の推理小説を読んだが、感受性の欠ける私にはこの本を読む限り推理小説は好きではなく、時間の無駄ということが分かった。まあ単にこの本がつまらないだけだろう。実際、私が推理小説と認識している門井慶喜の「天才たちの値段」はハラハラドキドキがあった記憶がある。また、文章中に「おられましか」などのおそらく正しくない敬語表現があった。もしかすると意図的にかもしれないが、少々不快に思った。
【ランク】4.5
【読書中メモの総覧】文章中の敬語
【備考】2009年7月30日に読み終えた。

2009/07/24

斜陽(太宰治)


【タイトル】斜陽
【著者名】太宰治
【発行年月日(初版)】1947年12月
【登場人物の年齢層】20代後半
【概略】敗戦後、元華族の母と離婚した“私”は財産を失い、伊豆の別荘へ行った。最後の貴婦人である母と、復員してきた麻薬中毒の弟・直治、無頼の作家上原、そして新しい恋に生きようとする29歳の私は、没落の途を、滅びるものなら、華麗に滅びたいと進んでいく。戦後の太宰治の代表作品。(「BOOK」データベースより)
【感想】夏休みの宿題の第二冊目。またもやダイソー。これも『人間失格』を購入する前に一冊まるまる一つの話が収録されていて(『人間失格』が収録されている本には『桜桃』も含む)お得かな、と思い購入したものの途中で飽きてしまい未読了のまま現在に至った。今回読み終えてみて予想以上にクオリティが高く、人間失格に並ぶ、もしくはそれ以上の作品だなと思った。斉藤孝がこのようなことを言っていたのも頷ける。(斉藤孝『若いうちに読みたい太宰治』『斜陽』の項目参照)第二次世界大戦後の没落貴族の様子が描かれている。堕ちていきながらも必至に生きようとする主人公のかず子のバイタリティは貴族の域を超えており、人間としての強さが見える。この強さは見習いたい部分である。感想文としては『人間失格』よりも『斜陽』のほうが書きやすいかな、と思った。クラスメートのO氏は『斜陽』は軽くて3時間ぐらいで読み終えたと言っていたが、それはどうよ。
    *          *           *
以下、今回の感想文。自分でも稚拙だなあと思う。
私は斜陽を読んで没落していく貴族の娘である主人公のかずこが必死に生きようとしている姿に強烈なバイタリティを感じた。自分が辛い状況に置かれているなか生きていこうとする姿が印象に残った。
対してかず子の弟である直治が自殺したことに嫌な印象を持った。
また、姉弟の生きる姿に大きなコントラストを感じた。片方が必死に生きようとするのに対してもう片方は現状に苦しみ自殺してしまうところにコントラストを感じ、斉藤孝が「太宰治の作品の中でいちばんの傑作は何かといえば、『人間失格』をあげる人が多いと思います。でも私は『斜陽』が完成度が最も高い作品だと思っています」(『若いうちに読みたい太宰治』p.95より)といっているように完成度の高さが感じられた。
斎藤孝は好きではないが、私もこの意見には同意だ。『人間失格』と『斜陽』の両方を読んでみたが、完成度でいえば『斜陽』の方が高いと思う。太宰の心情がより分かる事が
できるのは『人間失格』だと思うが、全体の完成度でいえば『斜陽』の方が一枚上手だと思った。
私がそのように感じたのは、これは私の勝手な貴族に対するイメージなのだが、普通貴族の娘は、ヨイトマケや畑仕事を行ったり、進んで上京したりなどしないと思ったからだ。
そもそも貴族とは何かというのを考えてみる。大辞林によると、「家柄・身分の高い人。代々、血統・門地により、社会的特権をもつ階級。日本では古くは藤原一族や公卿の家柄などがこれに相当し、明治維新後は華族令による華族をさしたが、第二次大戦後消滅した。」と書かれている。
その特権を持っていた彼女ら貴族だが、昭和21年に施行された貯金の封鎖と財産税により叔父からの仕送りが難しくなり、かず子一家は別荘への引っ越しを余儀なくされた。
そこでぼや騒ぎを起こしてしまったかず子は近所の農家で畑仕事を手伝った。その前にも戦争のときに徴用されてヨイトマケと呼ばれる力仕事を行っていた。
そのときに履いた地下足袋についてかず子は「地下足袋というものを、その時、それこそ生れてはじめてはいてみたのであるが、びっくりするほど、はき心地がよく、それをはいてお庭を歩いてみたら、鳥やけものが、はだしで地べたを歩いている気軽さが、自分にもよくわかったような気がして、とても、胸がうずくほど、うれしかった。」
またかず子が徴用されてやらされたヨイトマケについて、「私が徴用されて地下足袋をはき、ヨイトマケをやらされた時の事だけは、そんなに陳腐だとも思えない。ずいぶん嫌な思いもしたが、しかし、私はあのヨイトマケのおかげですっかりからだが丈夫になり、いまでも私は、いよいよ生活に困ったら、ヨイトマケをやって生きて行こうと思う事があるくらいなのだ。」とまで述べている。
『斜陽』の英語版のタイトルは『settting sun』というタイトルである。setには沈む、衰退するという意味があり、まさしく沈んでいく太陽を表している。
その「沈んでいく太陽」は普通畑仕事や力仕事は行わないはずなのに、かず子はその仕事を受け入れ、さらにはヨイトマケを仕事にしても良いというぐらいに肯定している。
更に、かず子のお母様が亡くなり、好きな上原を訪ねて上京する節があるが、その節の最初の一文が、
「戦闘、開始。」
である。
なんとも強く、頼もしい第一声ではないか。
それに比べてといってはさすがに手厳しいかもしれないが、弟の直治の自殺には全く持って姉とは対照的だと思う。
彼が現実に苦しむ姿はさまざまな場面で散見されるし、自殺したときに書かれた遺書に「姉さん。
僕は、死んだ方がいいんです。僕には、いわゆる、生活能力が無いんです。お金の事で、人と争う力が無いんです。」
などと自己を卑下する文章も書かれている。
が、やはり自殺は「逃げ」というのが自分の中での見方である。手厳しいかもしれないがもう少し生きる事をがんばってほしかった。
結論として、私は、この主人公の精神を見習い、大変な状況であってもそれを自ら進んで打破する精神を持とうと思う。加えて、自殺はやっぱりどうしようもなくなったときの最終手段であり、「逃げ」に値するという自分の中の見方も一段と強まった。その最終手段を使う前に自分の中で使えるカードを使いきってからその手段を検討しよう。
と、ありきたりな結論を述べたが、こんな大それた事はあくまで目標であり、すぐに実現できるとは全く思っていない。
だから、まず最初に自分が今置かれている大変な状況を一つ一つ確実に打破していこうと思う。
さて、そろそろ真面目に宿題や社会の取材に取り組むとしますか。
今回、前から家にあったダイソー文庫で『人間失格』と『斜陽』を読んだ。ISBN番号がない怪しい本だが、下に用語の解説が載っていて分かりやすかった。やはり体裁よりも中身が重要。
【ランク】6.5+α
【読書中メモの総覧】なし
【備考】2009年7月22日に読み終えた。

2009/07/23

人間失格(太宰治)


【タイトル】人間失格
【著者名】太宰治
【発行年月日(初版)】1948年5月12日
【登場人物の年齢層】少年期〜20代後半
【概略】「恥の多い生涯を送って来ました。自分には、人間の生活というものが、見当つかないのです」青森の大地主の息子であり、廃人同様のモルヒネ中毒患者だった大庭葉蔵の手記を借りて、自己の生涯を壮絶な作品に昇華させた太宰文学の代表作品。「いまは自分には、幸福も不幸もありません。ただ、一さいは過ぎて行きます」(「BOOK」データベースより)
【感想】夏休みの国語の宿題としてこの太宰治の『人間失格』を読んだ。前にも読んだ記憶がありこれが二回目になるが、主人公が破滅していくのには強い印象が残った。が、あまり自分が主人公の大庭葉蔵に共感できる部分は少なかった。ここまで人間不信ではないからかもしれない。wikipediaの記事を読む限り自伝的小説らしい。太宰治の状態がこの『人間失格』によって書かれているのであったと考えるととてもわくわくするというの興味が湧いてくるというのか。ただ感想文の題材としては『斜陽』の方が書きやすそうではあるかな、と思った。
       *             *
この作品はダイソーの本を買って読んだ。ダイソーの本にはISBN番号が表記されていないあたり正規(?)の出版物ではないのかなと思った。青空文庫の文章を用いているらしいが青空文庫は商業利用を認めているのかな。
【ランク】6
【読書中メモの総覧】▼神曲▼誘導尋問▼DIAL
【備考】2009年7月19日に読み終えた。(二回目)再読を促す。

2009/07/14

サンクチュアリ(フォークナー 西川正身訳)[未読了]


【タイトル】サンクチュアリ
【著者名】フォークナー
【訳者名】西川正身
【発行年月日(初版)】1994年10月20
【登場人物の年齢層】成人
【概略】ミシシッピー州のジェファスンの町はずれで、車を大木に突っこんでしまった女子大生テンプルと男友達は、助けを求めて廃屋に立ち寄る。そこは、性的不能な男ポパイを首領に、酒を密造している一味の隠れ家であった。女子大生の凌辱事件を発端に異常な殺人事件となって醜悪陰惨な場面が展開する。ノーベル賞作家である著者が“自分として想像しうる最も恐ろしい物語”と語る問題作。(「BOOK」データベースより)
【感想】読み終わらなかった。挫折ということになる。途中で読むのを放棄してしまうのは『The Catcher In The Rye』以来覚えている中では二冊目になる。
 文庫本の概略に女子大生が陵辱される云々と書かれていたため好奇心から読み始めたという下劣なきっかけだが、ここまでハードルが高いとは思わなかった。6月の頭から読み始めたが、あまりに長いのと読みづらい、難しいの三点セットで挫折した。
 そもそも、1ページに上下に分かれているスタイルを読むのが初めてで、まあ読み終えるだろうという甘い目論見をしていたところ、あまりの文章量の多さに打ち砕かれてしまった。さらに、古い翻訳本という感じがして情景描写が難しく,比喩が多用されて直接的な描写が少ないのも挫折するきっかけとなってしまった。
 しばらく自分の身分にあった難度と文章量の本を読もうと思った。
【ランク】-
【読書中メモの総覧】なし
【備考】未読了。