2011/05/23

非国民(森巣博)


【タイトル】非国民
【著者名】森巣博
【発行年月日(初版)】2003年04月15日初版
【登場人物の年齢層】高校生〜
【概略】『ハーフウエイ・ハウス・希望』―中野にある「薬物依存」からの“悔悛を志す者”たちが共同生活をおくる施設である。少年院帰りの亮太、輪姦された忌わしき過去を持つ少女バイク、オーストラリア美人の大学院生メグ、元ヤクザのスワード、元大手証券幹部の鯨。非国民で不道徳の個性豊かな面々は「強制」と「義務」のない日々を過ごし、次第に本当の「更正」に目覚めていく。しかし施設の運営費に困窮し、汚職と賭博と恥辱にまみれた最悪の警察官たちを相手に一世一代の大勝負を挑むのだが…。
【感想】図書館にて適当に。


 森巣博といえばクーリエ・ジャポンで好き放題にお上・権力批判しているというイメージが定着しているが、この本でも(小説なのだが)似たような口調で権力風刺を行う場面が多々見られた。真面目かネタかわからない中途半端な感じ。最後に参考文献を載せるほどなのだが、所々ふざけた口調が混ざってあり、どっち付かずという印象。まあそれでもなおバカラのシーンは惹かせるものだ。一度是非「絞り」を体験してみたいが、現実カジノに行く機会もないしなあ。


 最後の勝負はバカラにしてほしかった。今までずっとバカラだったのに、数字の大きい方が勝ちという単純なものにしたのか、残念。


 カジノとカシノの違いはなんなのだろうか。カシノというトランプゲームが存在することをWikipediaで知ったが。
【ランク】5.5+α
【読書中メモの総覧】クーリエと同じ語調、「お上」への皮肉、批判
博奕がしたい、バカラがしたい
【備考】2011年05月18日に読み終えた。

2011/05/16

星を継ぐもの(ジェイムズ・P・ホーガン、池 央耿訳)


【タイトル】星を継ぐもの
【著者名】ジェイムズ・P・ホーガン
【訳者名】池 央耿
【発行年月日(初版)】1980/05/13
【登場人物の年齢層】成年
【概略】月面調査員が真紅の宇宙服をまとった死体を発見した。綿密な調査の結果、この死体は何と死後五万年を経過していることがわかった。果たして現生人類とのつながりはいかなるものなのか。やがて木星の衛星ガニメデで地球のものではない宇宙船の残骸が発見された……。ハードSFの新星が一世を風靡した出世作。
【感想】 おそらくダヴィンチより。


 今まで読んだSF作品のなかで記憶に残っているのは筒井康隆の「時をかける少女」とケン・グリムウッドの「リプレイ」の2作品だけである。しかし両者とも亜流というのか、そこまで、いやあまりSFっぽくなかった印象がある。

 それらに比べてこの作品は半端なく強烈である。おそらく本格SF小説に分類されるであろう、それほどSF色が濃い。未来を舞台に、持て余すことなく山盛り設定という感じで、緻密な世界観が形成されている。

 正直なところ、完全に理解できた印象はない。所々「あれ、そうだったっけ」があったし、この本のストーリー展開における面白さを余すことなく堪能できたとは言い難い。きっと噛み締めて読めばもっと面白かったのだろうが、残念ながらお腹一杯である。

 月で発見された人間に酷似した生命体の謎を探るうちに人類との起源とも関わってくる、という話だが、言い訳だが、新たに設定された名前に混乱してしまって、スラスラ読めないことが、面白さを妨げているような気がするのである。慣れていないからしょうがないかもしれないが……話の後半に登場したガニメデという月の生命体の以前の話がメインの続編があるらしいが、あんまり読む気は起きない。
【ランク】5.5+α
【読書中メモの総覧】綿密に作られた世界
【備考】2011年5月13日に読み終えた。

2011/05/07

花宵道中(宮木あや子)


【タイトル】花宵道中
【著者名】宮木あや子
【発行年月日(初版)】2007/02/20
【登場人物の年齢層】成年
【概略】吉原の遊女・朝霧は、特別に美しくはないけれど、持ち前の愛嬌と身体の“ある特徴”のおかげでそこそこの人気者。決して幸せではないがさしたる不幸もなく、あと数年で年季を終えて吉原を出て行くはずだった。その男に出会うまでは…生まれて初めて男を愛した朝霧の悲恋を描く受賞作ほか、遊女たちの叶わぬ恋を綴った官能純愛絵巻。第5回R‐18文学賞大賞&読者賞ダブル受賞の大型新人が放つ、驚愕のデビュー作。(「BOOKデータベース」より)
【感想】図書館で見かけて。

 宮木あや子の作品は「春狂い」(このときの感想ひどすぎるなあ)を読んで強烈な印象を覚えた記憶があるが、前と同じように各短編がかなり深く関連している。そして、そこで描かれる登場人物、特に女郎はどれも個性がある。職業柄当然だが、平凡、地味、印象薄い者はいない。各人それぞれの吉原での生活はそれぞれの特徴があって面白い。


 この作品は著者の処女作であり、しかも最初の短編が「女による女のためのR-18文学賞」とやらの大賞と読者賞のダブル受賞しているだけあって、強烈な色恋沙汰と官能表現である。この人の官能表現は徹底した淫らさという印象を受けるほどだ。加えて情熱的でロマンティックである。それはこの作品と前読んだ作品と一貫している。


 てか漫画化してるのか!機会があったら是非読んでみたいと思う。
【ランク】6.5+α
【読書中メモの総覧】なし
【備考】2011/05/07に読み終えた。

2011/05/01

色彩の息子(山田詠美)


【タイトル】色彩の息子
【著者名】山田詠美
【発行年月日(初版)】1991年04月20日
【登場人物の年齢層】多岐
【概略】さまざまな色にたくされた愛を求める心の裏側にぴったりと寄り添うような深い闇。その闇を憎みつつその深さに酔わずにはいられない“私”たち…。しっとりとぼくの体にまとわり付く、声の血―赤。とろりとしたヴァセリンの塊をすくう彼の指―黄。心に刻み込まれてしまった黒子―黒。朝陽に輝く蜘蛛の糸の指輪―銀…それぞれの色から、孤独、愛への渇望、絶望と憎悪、そして再生が立ち上がってくる異色短編集。(BOOKデータベースより)
【感想】ダヴィンチより。

 自分の読む山田詠美作品はだいたい男と女の関わりについて書かれた短編集という形式で、これも同じ形式であるが、山田作品を久しぶりに読むからかやはり安定した印象である。ただこの作品は男と女に限定しているわけではなく、母と息子、また男と男なんてものもある。

 あとがきにも述べられているが、各々の短編でそれぞれ一つずつ色がテーマになっており、それぞれその色のカラーページが挟まれている。例えば親友の彼女を寝取り、紫色の痣をつけ、それをその美しさを親友に伝える「高貴なしみ」では、紫色のカラーページがあり、またほくろを忌む女が主人公の「黒子の刻印」では黒のカラーページ、といった感じである。こういった試みは初めて見るもので、とても新鮮であった。


 「高貴なしみ」と言う短編が一番印象に残った。主人公と彼女の共犯を知らされた時の親友の表情が痛快である。こういう主人公は本当に羨ましい。
【ランク】6.5
【読書中メモの総覧】なし
【備考】2011年04月30日に読み終えた。