2009/11/03

O嬢の物語(ポーリーヌ・レアージュ 澁澤龍彦訳)


【タイトル】O嬢の物語
【著者名】ポーリーヌ・レアージュ
【訳者名】澁澤龍彦
【発行年月日(初版)】1992年6月4日初版
【登場人物の年齢層】成年
【概略】パリの前衛的な出版社ポーヴェルから1954年に刊行された本書は、発表とともにセンセーションを巻き起こし、「ドゥー・マゴ」賞を受賞した。女主人公の魂の告白を通じて、自己の肉体の遍歴を回想したこの書物は、人間性の奥底に潜む非合理な衝動をえぐり出した、真に恐るべき恋愛小説の傑作と評され、多くの批評家によって賞賛された。(文庫裏表紙)
【感想】雑誌に「完訳 Oの物語」の広告が載っていたのがきっかけで読み始めた。amazonのレビューを見る限り澁澤龍彦訳の方が物語として読みやすいという印象を受けたので澁澤龍彦訳の方を読んだ。
 内容は自ら自由を放棄して奴隷状態になった女性の物語である。直接的な描写はほとんどなく、オブラートに包まれた描写で描かれている。あとがきでも触れられているが、官能の興奮の描写は極力排除されている。だから村上龍の「エクスタシー」を読むような気持ちで読み始めた自分はやや場違いな感じがした。また、文全体からも非常に高尚な感じがする文体で描かれている事も驚きの一つである。非常に想像力を使う描写も多い。
 文庫裏表紙にも書かれているが、このOの行動は非常に非合理的な衝動である。何らかの事情で余儀されなくなったのならまだしも、結果的に自らこのような状況に入り込むのは世間一般の人間からすれば非常に馬鹿げた行動である。だがやはりこの行動は理屈云々のものではない。理解できる者には非常に美しい小説といえるのかもしれないが、自分のような理解できないものにとっては非常に痛々しく、理解不能な小説である。鞭を打ったり、焼ごてで自分の名前を刻むという行動は自分にとっては欲望を満たすようなものではないと思う。村上龍の「エクスタシー」のほうが断然理解できる。ここまで来ると自分自身の好みの問題となるのだろうか。
 「完訳 Oの物語」では続編である「再びロワッシーへ」も収録されているらしいが、購入してまで読もうとは思わない。
 17年前に出版された書物という事で漢字が難しくやや読み辛かった。
【ランク】6.5α
【読書中メモの総覧】-
【備考】2009年10月25日に読み終えた。再読を促す。

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