2009/05/28

リプレイ(ケン・グリムウッド)☆


【タイトル】リプレイ
【著者名】ケン・グリムウッド
【訳者名】杉山高之
【発行年月日(初版)】1990年7月20日
【登場人物の年齢層】大学生〜40歳代
【概略】人生をやり直せることになった男の辿った物語(by me)/ニューヨークの小さなラジオ局で、ニュース・ディレクターをしているジェフは、43歳の秋に死亡した。気がつくと学生寮にいて、どうやら18歳に逆戻りしたらしい。記憶と知識は元のまま、身体は25年前のもの。株も競馬も思いのまま、彼は大金持に。が、再び同日同時刻に死亡。気がつくと、また―。人生をもう一度やり直せたら、という窮極の夢を実現した男の、意外な、意外な人生。(「BOOK」データベースより)
【感想】友人のKの勧めにより読んでみた。「人生のやり直し」という設定はかなりベタな設定であり、果たしてどのように展開していくのか興味を抱きながら読み進めていった。全ての人生のやり直しが決して幸福なものではなく、むしろ人生が強制的にやり直しになってしまうという点では不幸である点でよくありがちな夢物語ではないところがまず最初に面白みを感じた。また、主人公の他にも「人生をやり直す」状態になっている人物が登場し.同じ境遇を味わうものとして惹かれ合うものの、だんだん「人生をやり直す」期間が短くなっていくにつれて不安になっていくところも描かれていて面白い。
 SF小説は今まであまり読んだことがなく、なんとなく「所詮は面白設定によるエンターテイメントだろ」みたいな的確ではないイメージを持っていたのだが、この本を読んだことでSFも普通の小説(この言い方もあまり良くないかもしれない)と同じくさまざまな心情が描かれていたり、また、多彩な読みを可能にする本であることが分かった。とりわけこの本は様々な読みが可能であるし、様々なことが学べるのである。そのなかでも個人的に一番印象に残ったことは時間はたくさんあるようで気がついたら全く残っていない、ということである。これに関して印象に残った本文の一節を挙げる。
 「彼女はタクシーに乗り込むと彼を見上げて、若さは無限だという思い込みと、楽観主義を丸出しにしていった。『大丈夫よ。私たちには解決策を見出す時間はたっぷりあるわ。時間ならいくらでもあるんですもの。』それは幻想であるとジェフは知っていた。あまりにもよく知りすぎていた。」(P.442〜P.443)これは主人公のジェフが何回もの「リブレイ」によって長く生き、そしてもうすぐそのリプレイが終わりを迎えようとしていることで身を以て思っていることであるが、この場面がかなり印象に残った。
 余談であるが、この作品は1988年度の世界幻想文学大賞を受賞したようである。この賞がどれぐらい凄いのかよく分からないが、結構評価されているようである。また、この設定はゲーテの「ファウスト」に影響を受けているようである。ゲーテってこういう設定の本も書くんですね。興味が湧いてきました。
【ランク】7.5
【読書中メモの総覧】なし
【備考】2009年5月28日に読み終えた。再読を促す。

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