2009/10/15

向日葵の咲かない夏☆ (道尾秀介)


【タイトル】向日葵の咲かない夏
【著者名】道尾秀介
【発行年月日(初版)】2008年8月1日文庫版
【登場人物の年齢層】小学生
【概略】夏休みを迎える終業式の日。先生に頼まれ、欠席した級友の家を訪れた。きい、きい。妙な音が聞こえる。S君は首を吊って死んでいた。だがその衝撃もつかの間、彼の死体は忽然と消えてしまう。一週間後、S君はあるものに姿を変えて現れた。「僕は殺されたんだ」と訴えながら。僕は妹のミカと、彼の無念を晴らすため、事件を追いはじめた。あなたの目の前に広がる、もう一つの夏休み。(「BOOK」データベースより)
【感想】「O嬢の物語」の間に読んだ。(新型インフルエンザで出席停止中)1日で読み終えた。またブックオフで購入。以前朝日かどっかの書評に載っていたのをきっかけに読んでみた。
 感想はまず、衝撃的だった。というのか小説を読んだあとにあのようにいてもたってもいられないという気分になったのは初めての経験である。部屋のなかを意味もなくうろうろしてしまった。本格ミステリであるとは思っていたが、このような作品だとは思っていなかった。
 最初は比較的普通であった。主人公ミチオが友人宅で友人の死体を発見し、学校で報告するが警察が見に行ったときには既に消えている………
 おかしくなりはじめたのは死んだはずの友人が蜘蛛となって蘇ってからである。そんなことが有り得ていいのか、と思いつつも進んでいく。以下、物語の出来事、特に印象的な場面と私の心情。
トコ婆さん怪しい念仏(非科学的だがまあいいか)、蜘蛛となった友人を見たスミダさんの対応(そんな簡単に納得していいのかよ)、ミカの三歳とは思えぬ発言(異常に大人びてるな)、岩村先生の変態性癖発覚(加速する狂気だなぁ、でも小説としての問題はない)、女郎蜘蛛を友人がいるケースに入れる(加速する狂気だなぁ、でも小説としての問題はない)、ミチオが寝ている妹のミカの指を口に含む(どんどん狂気が加速するな)、〔やや飛ぶ〕人蜘蛛を潰す(えぇー、潰してええんかい)、潰したその蜘蛛をミカが食べる(はぁ!?、食べる方もあれだが食べさせるミチオもなんなんだ、〔ここからノンストップで訳が分からなくなり始める〕)、名探偵コナン顔負けの推理を始める(ミチオ小4かよ)、殺されたトコ婆さんが生まれ変わった三毛猫だと分かる(トコ婆さんも人間じゃないのか)、後ろの席のスミダさんが百合の花だと分かる。(訳が分からない) 、ミカがトカゲだと分かる(意味不明)、ミチオがお爺さんを殺す(ありかよ)、お爺さんがカマドウマとして復活する(意味不明)、友人をミチオが自殺さ
せたことが分かる(最初からかよ)、ミチオが家に火をつける(加速する狂気だがいよいよ訳が分からない)、家族みんなが平然と会話して終わる(わけわかめ)

 といった流れである。ダラダラ書き続けたのは出来事とそれに対する自分の心情を書き記しておきたかったからである。それほどこの作品に対する心情の変化が激しかったからだ。
 読み終えた当初は全くもって訳が分からなかったし、落ち着いていられず部屋の中をうろうろしていたが、落ち着いて解説を読んだり読み返してこの謎を考えてみると、これはすなわちミチオの誇大妄想なのか、という考えに落ち着いた。解説を読んでみても主人公のねじれた主観、誤解幻想云々が話題にされていることや、ネット上の解説を読んでみても間違ってはいないと思う。それにしても本格ミステリというものはこういうものも含むのか。イマイチこのジャンルのことがよく分からない。
また、これはネット上の解説をみて知ったのだが、最終的にはミチオを助けるために両親は死に、ミチオは一人になったことが最後の描写「太陽は僕たちの真後ろに回り、アスファルトには長い影が一つ、伸びていた。」から分かる。この描写には違和感を覚えていたがそういう意味だったとは。確かに親戚がミチオを引き取るということが書かれていることからも分かる。
 解説でも述べられていたが、主人公のねじれた主観を本格ミステリにまで仕立てあげるのはかなりの文章力がいる。この道尾秀介という作家は並外れた文章力がある。
 また、本筋ではないと思いつつも「加速する狂気」というキーワードをテーマに本書に着目したい。この「加速する狂気」というキーワードは「向日葵の咲かない夏」には全く出てこず、関係ないが最近「加速する狂気」に纏い付かれた行動が描かれている小説を中心に読んでいるなか、本作品も例外なく、むしろ予想以上にその人物や行動が見受けられた。岩村先生の変態性癖はもちろん、お爺さんの足の骨を折る行動、ミチオが女郎蜘蛛を友人蜘蛛がいるケースにいれたり、お爺さんを殺したり。ミチオは行動のほとんどがが「加速する狂気」に纏い付かれたと言えなくもない。こうした「加速する狂気」に纏い付かれた人物や行動を見るのは非常に面白い。その点でもこの小説は秀逸である。ただミチオが10歳という設定はかなり無理があると思うが、母親からの影響と考えれなくもないから許容範囲だろう。
 朝日書評や解説には好き嫌いの別れる作品だと書かれてあった。私は嫌いではない。小説の新しい可能性を見してもらった極めて面白く秀逸な作品であった。

今気付いたがミチオは著者の名前じゃないか。全然気付かんかった。
【ランク】8.5
【読書中メモの総覧】▼加速する狂気▼奇想天外な場面▼ミカが三歳?▼ミチオも変態▼ミチオも小4?▼引きずり込まれる▼予想を裏切る▼ノンストップで訳が分からない▼人じゃない!?▼精神に干渉する(初めての体験)▼衝撃的▼カオスすぎる
【備考】2009年10月12日読了。再読必須。

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