2010/11/14

俺俺(星野智幸)

【タイトル】俺俺
【著者名】星野智幸
【発行年月日(初版)】2010年6月30日
【登場人物の年齢層】大学生~30代
【概略】マクドナルで隣り合わせた男の携帯電話を手に入れてしまった俺は、なりゆきでオレオレ詐欺をしてしまった。そして俺は、気付いたら別の俺になっていた。上司も俺だし母親も俺、俺でない俺、俺ではない俺、俺たち俺俺。俺でありすぎてもう何が何だかわからない。電源オフだ、オフ。壊ちまうす。増殖していく俺に耐えきれず右往左往する俺同士はやがて―。孤独と絶望に満ちたこの時代に、人間が信頼し合うとはどういうことか、読む者に問いかける問題作。(「BOOK」データベースより)
【感想】朝日新聞の書評欄より。


 通読して率直に思ったのは「カオスな作品だな」という印象である。登場人物が次々に「俺」化していく様子は最初は面白いなと思ったものの、だんだん増殖していくに従って恐怖が芽生えてきた。


 もちろん設定などにいろいろ突っ込むことができるかもしれないが、それを凌駕するほどの物語の展開だったと思う。途中この主人公がどういうような環境で、どういう家族構成を持っていたかが混同しだんだん自分というものがわからなくなっていく様子には混乱し変な気持ちになっていった。たまにはこういう不思議な小説を読むのも悪くはないと思う。


 朝日新聞の書評では、『派遣労働などが一般化し、個の固有性が希薄化する現代日本社会。入れ替え可能な個の群れが出現し、アイデンティティーを保つことが難しくなっている。俺が俺である必要性は果たしてあるのか? 俺は本当に他者から承認されて生きているのか?そんな不安ゆえに、人は他者とつながりたい。心と心で結びつき、互いに必要とし合う関係を築きたい。しかし、それが行き過ぎると、自己と他者との区別がつかなくなる。自己のアイデンティティーは他者の群れの中に溶解し、全体へと回帰する。本作は、現代社会の状況と普遍的な人間のアイデンティティーの問題に迫った現代文学の金字塔だ。今まさに存在の不安に押しつぶされそうな人は、ぜひ読んでほしい。全体主義やファシズムの「危うい魅力」に関心がある人にとっては、必読の作品。』と紹介されている。なるほど、この小説はこのようにも読むことができるのかと頷いた。


 著者のブログやtwitterを読んでみると世間や、社会状況に対して深く考察しているのが見受けられた。いろいろ踏まえてこの小説のことを回想すると、この小説は結構深いことを考察し、風刺しているんだな。


 書評を執筆しているのが中島岳志氏で、「クーリエ・ジャポン」においてインドに関する記事をよく見かけるのを思い出した。意外なところで繋がっているものだ。
【ランク】6+α
【読書中メモの総覧】なし
【備考】2010年11月13日に読み終えた。

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