2009/12/06
この胸に深々と突き刺さる矢を抜け 下(白石一文)
【タイトル】この胸に深々と突き刺さる矢を抜け 下
【著者名】白石一文
【発行年月日(初版)】2009年1月26日初版
【登場人物の年齢層】成人
【概略】スクープ記事は大反響を呼ぶが、上層部から圧力がかかり、編集部内の人間関係もねじれ出す。もつれて膠着する状況のなかで、カワバタは、ある運命的な出会いへと導かれる。まるであらかじめ定められていたかのように。思考と引用をくぐり抜けた後に、「本当のこと」が語られる。現代を描き続ける著者が、小説という表現の極限を突き詰めた渾身作。いよいよ完結。(「BOOK」データベースより)
【感想】下巻は上巻よりも抽象度の高い内容が多かった。物語のラストは非常にきれいだった。
下巻にてタイトルにある「この胸に深々と突き刺さる矢」の正体について語られている。その文章とその前の文章を引用したいと思う。
『僕たちは今の中にしか生きられない。歴史のなかに僕たちはもうどこにもいないのだ。過去のなかにもこれからの過去にも僕たちはどこにもいない。今、この瞬間の中にしかいない。この瞬間だけが僕たちなのだ。時間に欺かれてはならない。時間に身を委ねたり、時間を基軸にして計画を練ったりしてはならない。そういう過ちを犯した瞬間、僕たちは未然のものとなり、永遠に自らの必然から遠ざけられてしまう。そして、影も形もない希望や取り返しのつかない事柄への後悔や懺悔の虜となり果て、偽りの神の信徒となるほかに生きる術を失ってしまうのだ。
この胸に深々と突き刺さる時間という長い矢、偽りの神の名が刻まれた矢をいまこそこの胸から引き抜かねばならない。この矢を抜くことで、僕たちは初めてこの胸に宿る真実の誇りを取り戻すことができるのだから・・・・・・』
上巻の経済格差の問題については理解することが比較的容易かったが、下巻の時間や概念的な抽象度が高まるにつれてただなんとなく鵜呑みにしてしまう回数が多かった。上記の文章についても、真実の誇りが何なのかわからない。やはり一回読むだけでは概念的な論述は理解しにくい。(最近思い始めたのがそのような概念的な話に意味はあるのか?)正直上巻の経済格差についての問題でお腹いっぱいである。経済格差の問題は自分のなかで考察することができたが下巻は・・・
次は純粋に物語を楽しむ本を読もう。
【ランク】6
【読書中メモの総覧】なし
【備考】2009年12月4日に読み終えた。再読を促す。
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