2009/11/12
犯人に告ぐ(雫井脩介)☆
【タイトル】犯人に告ぐ
【著者名】雫井脩介
【発行年月日(初版)】2004年7月ハードカバー初版
【登場人物の年齢層】3,40代
【概略】闇に身を潜め続ける犯人。川崎市で起きた連続児童殺害事件の捜査は行き詰まりを見せ、ついに神奈川県警は現役捜査官をテレビニュースに出演させるという荒技に踏み切る。白羽の矢が立ったのは、6年前に誘拐事件の捜査に失敗、記者会見でも大失態を演じた巻島史彦警視だった—史上初の劇場型捜査が幕を開ける。第7回大藪春彦賞を受賞し、「週刊文春ミステリーベストテン」第1位に輝くなど、2004年のミステリーシーンを席巻した警察小説の傑作。(「BOOK」データベースより)
【感想】「ダ・ヴィンチ」の特集、及び映画を昔見たのがきっかけ。
劇場型犯罪に対し劇場型捜査で対抗し、犯人を追い詰めていく物語である。
非常に興奮し、面白かった作品だった。読んでいて久しぶりに早く先が読みたいと思った作品である。
まず読んでいて印象に残ったことは、非常にリアリティに溢れ、人間味があることである。平凡な小説は主人公の心情描写にどこか小説ならではの心情、という部分が見受けられることがある。例えばもっと嫉妬するような場面でも異様にクールだったり、こんなに思惑通りに進むわけないだろ、という場面が見受けられることがある。
しかし、この小説は人間の心情や欲望に忠実である。上司が女性の気を引くために捜査情報を流したり、犯人と思わしき人物を発見して手が震えたり。極めつけは主人公が犯人逮捕失敗の記者会見での記者達の執拗な責めに逆ギレして「他人の子なんてどうやったって感情移入に限界があるんだ!」と言ってのけたり。確かに自分の子供と殺された子供には感情移入に差が生まれるのは当然の事なのだが、それでも普通は口にしない。人間らしさが滲み出ている。これほど人間味のある小説だとは思わなかった。
さらに、捜査情報をニュース番組にリークしている人物をあぶり出す場面も非常にわくわくした。私用のために捜査の邪魔になるような行動をとった上司へ一泡(そのレベルを超えてるとも言えるが)吹かせるのは読んでいて面白かった。
だが、一番印象に残るのは犯人に対してニュース番組で主人公が逮捕へ終止符を打つときに言う台詞である。以下引用。
『[バットマン]に告ぐ。』『お前は包囲された。』『多少時間がかかったが、我々はようやくお前を追いつめた。逮捕はもう時間の問題だ。逃げようと思うな。失踪した人間は真っ先にマークする。今夜は震えて眠れ。』『手紙を落とした失態を悔やんでも遅い。余興は終わった。これは正義を全うする捜査であり、私はその担い手だ。お前は卑劣な凶悪犯であり、徹底的に裁かれるべき人間だ。それをわきまえなかったお前の甘さが致命的だったと言っておく。正義は必ずお前をねじ伏せる。いつかは分からない。おそらく正義は突然、お前の目の前に現れるだろう。首を洗ってその時を待っていろ。以上だ。』この言っている情景を想像するだけで背筋が凍るような思いがする。映画版をもう一度見てみよう。
現実的な内容かと言ったら疑問符がつくが、ミステリーというものはそういうものであり、またその枝葉な部分を超越するクオリティの高さと面白さがあった。映画をもう一度見ようと思う。
【ランク】8
【読書中メモの総覧】-
【備考】2009年11月9日に読み終えた。
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