2009/08/26
フラッタ・リンツ・ライフ Flutter into Life(森博嗣)
【タイトル】フラッタ・リンツ・ライフ Flutter into Life
【著者名】森博嗣
【発行年月日(初版)】2007年11月25日
【登場人物の年齢層】-
【概略】ずっと二人で空を飛んでいても、決して触れることはない。彼女の手を、彼女の頬を、僕の手が触れることはない—「僕」は濁った地上を離れ、永遠を生きる子供。上司の草薙と戦闘機で空を駆け、墜ちた同僚の恋人相良を訪ね、フーコのもとに通う日々。「スカイ・クロラ」シリーズ急展開。
【感想】「スカイ・クロラ」シリーズ第四作目。本作品は語り手がクサナギからクリタジンロウに代わった。栗田といえば「スカイ・クロラ」においてカンナミの前任者でクサナギ殺したという人物である。
解説にも書いてあったことだが、本作品はシリーズの中でも比較的地上にウェイトがおかれていると思う。また、クサナギが既にキルドレではなくなっていることが明かされた。原因はティーチャの子供を運だからとされているが、では、「スカイ・クロラ」で何故クサナギが死を希求したかが分からなくなった。この辺りは次作「クレィドゥ・ザ・スカイ」で明かされるのかな。
クリタのクサナギに対する感情が淡い片想いな感じがして人間味があり面白い。
やや中だるみというか飽きが来ている感じがしている。シリーズ作品を読むことにあまり慣れていないからか。次作で一応一連の話は終了なので期待。
【ランク】-
【読書中メモの総覧】-
【備考】2009年8月26日に読み終えた。
2009/08/23
ダウン・ツ・ヘヴン Down to Heaven(森博嗣)
【タイトル】ダウン・ツ・ヘヴン Down to Heaven
【著者名】森博嗣
【発行年月日(初版)】2006年11月25日初版発行
【登場人物の年齢層】-
【概略】子供はみんな、空を飛ぶ夢を見るのだ。飛べるようになるまで、あるいは、飛べないと諦めるまで—戦闘機に乗ることに至上の喜びを感じる草薙だが、戦闘中に負傷し入院、空を飛べぬ鬱屈した日を過ごすことに。組織に守られる存在となりつつある自分になじめないままに。そしてある日「少年」に出会う。
【感想】「スカイ・クロラ」シリーズ第三作目。主人公がクサナギで、なんだかよかった。この作品で初めてスカイ・クロラの主人公であるカンナミが登場する。
本作品の解説がとても良かった。エアショーパイロットである室屋義秀氏による解説なのだが、自信が飛行機に乗っている事もあって飛行機屋の思考や心情などが書かれてあって非常に興味深かった。以下印象に残った解説引用。
* *
地上にいる時と飛行機中のコックピット内では、随分思考のプロセスが異なっている。地上にいる時の安息の環境と、地上から遠く離れたコックピットでは、流れる時間のスピードが圧倒的に違う。
コックピットでは、思考が影を潜め、感性と肉体的反射により瞬間的に動作が繰り返される、性の官能に程近いような状態となる。パイロットと飛行機はまさに、一体化していく。命を掲げて自由を堪能する、究極の世界がそこにはある。
一方、地上では命を保障されるかわりに、社会的なルールに縛られ自由を失う。日常の雑多な事に振り回され、コックピットの中で感じる時間の何十倍もの時を過ごさなければならない。
水素が病院で創造した少年は、生と死・自由と社会という狭間で生み出された、パイロット特有の混濁した思考の現れであろう。
水素の願望である「明るい本当の空へ。もう一度あがっていこう。」という自我の本質的欲求は私も同じなのだろう。わずらわしい人間関係、混沌とした社会のルール、そして営々として築かれてきた文化という名の不文律。大地という安定した水と緑の世界は孤独を消し去り人間集団を築き上げ、個という存在を見失った。
人は本当の個という存在をなかなか感じられないかもしれない。生まれた瞬間には既に家族があり、社会があった。個とは何か特異な状況の一種かもしれない。
空にはスホーイに乗る私の存在しかない。機体だけを信じ本当の自由の中で孤独な自分に不安を感じながら飛ぶ、しかし、地上に降りると又空へあがりたくなる。
* *
この解説が私が「スカイ・クロラ」シリーズに登場するクサナギやカンナミの心情を理解する事を十分に助けた。「ダウン・ツ・ヘヴン」にはさまざまな出来事があったが、この解説が一番印象に残った。同時に、このシリーズの登場人物の思考や心情、行動の理由をより理解し、また楽しめるようになったと思う。この解説がなければ、自分がクサナギや、カンナミの気持ちをあまり理解できなかったかもしれない。
この解説を忘れずにこれから読んでいこうと思う。
【ランク】-
【読書中メモの総覧】バイアス ストール・ターン
【備考】2009年8月22日に読み終えた。
2009/08/21
ナ・バ・テア None But Air(森博嗣)
【タイトル】ナ・バ・テア None But Air
【著者名】森博嗣
【発行年月日(初版)】2005年11月25日 (文庫)
【登場人物の年齢層】-
【概略】信じる神を持たず、メカニックと操縦桿を握る自分の腕だけを信じて、戦闘機乗りを職業に、戦争を日常に生きる子供たち。地上を厭い、空でしか笑えない「僕」は、飛ぶために生まれてきたんだ??大人になってしまった「彼」と、子供のまま永遠を生きる「僕」が紡ぐ物語。森博嗣の新境地、待望のシリーズ第二作!
【感想】「スカイ・クロラ」シリーズ第二作目。最初に「スカイ・クロラ」を読んだので次にこの本を手に取ったのだが、かなり重要なミスを犯してしまった。最初、主人公を「スカイ・クロラ」と同じ、即ちカンナミだと思っていたのだ。合田との会話で「なんかおかしいな」と思い、次のページで初めてこの主人公がクサナギだという事に気づいた。思わず電車の中で苦笑してしまった。第一自分の事を「僕」と呼んでいたので全く持って気づきませんでした。僕っ子か。
それはともかく、この本も時折短い文の連続して続く場面があり、詩的な部分があったり、戦闘シーンもあった。主人公がクサナギである事が「スカイ・クロラ」に比べてよかった。より人間味があったり、より日常的な部分があるからだ。それでも冷たい部分があるのだが。また、尊敬の存在であるチィーチャとの会話や関係が読んでいておもしろかった。
また、この本で「スカイ・クロラ」に一応妹という事で登場しているミズキがこの本でクサナギスイトから生まれたかな、と推測できる。チィーチャとやってできた子供だろう。また、そのできた子供に対するクサナギの反応が冷たい。まあ当然といえば当然なのだが、だがこんな冷酷(この表現にやや疑問)なキャラが嫌いではない。
この本が「スカイ・クロラ」シリーズの時系列の一番最初に当たるので、ここから徐々に「スカイ・クロラ」に戻っていこう。
* *
解説の冒頭に『森先生にこの小説を読んだ感想をメールしたときに、「一発で××! という話ですね」と書いたら、「うわあ! 恥ずかしい!」という返事が返ってきました。』と書かれてあった。
筆者にその感想を送るのはどうなのかな。まあもちろんそれしか書いていないわけないと思うのだが、解説中の文をそのままメールしていたとしたら、冗談でもあまりいい気持ちがしない。
【ランク】-
【読書中メモの総覧】主人公は草薙 僕っ子 やられた
【備考】2009年8月21日に読み終えた。
2009/08/19
スカイ・クロラ The Sky Crawlers(森博嗣)
【タイトル】スカイ・クロラ The Sky Crawlers
【著者名】森 博嗣
【発行年月日(初版)】2004年10月25日第一版
【登場人物の年齢層】-
【概略】僕は戦闘機のパイロット。飛行機に乗るのが日常、人を殺すのが仕事。二人の人間を殺した手でボウリングもすれば、ハンバーガも食べる。戦争がショーとして成立する世界に生み出された大人にならない子供—戦争を仕事に永遠を生きる子供たちの寓話。
【感想】押井監督が監督を務めた映画の原作の一つ。今まで目にはつけてはいたものの、どれから読んでいいのか分からずずっと見過ごしてきた。今回図書券が手に入った事で、とりあえず一番最初に刊行されているこの本を購入してみた。
語り手である主人公はかなり冷めた感じである。自分の仕事や思った事を冷めた感じて綴ってある。
どうやらこの本は時系列で見て「スカイ・クロラシリーズ」のなかで一番最後に当たるらしく、wikipediaの項目にも「ナ・バ・テア」が一番時系列で最初らしい。前述のwikipediaの項目に『刊行順での1作目は『スカイ・クロラ』だが、作中の時系列では最後にあたる内容であり時系列順に並べ替えると『ナ・バ・テア』、『ダウン・ツ・ヘヴン』、『フラッタ・リンツ・ライフ』、『クレィドゥ・ザ・スカイ』、『スカイ・クロラ』となっている。文庫にかかる帯もこの順番でスカイ・クロラシリーズを紹介している。筆者によれば、「第1巻は「ナ・バ・テア」ですので、これから読むのが普通」と言う事だが、「どの巻から読んでも差し支えは無い」とも語っている。』という記述があった。最初にこの本を読んで、時間を遡って読む方がいいと考えた(という事にした)。amazonのレビューにも刊行順に読んだ方がいいという記述もあったし。この本ではキルドレである草薙水素が自分の将来を悲観的に見て主人公に殺してくれるよう懇願し最終的に願いが達成されるのだがその考えまでに至った経緯が遡っていく事で分かると思う。
とりあえずシリーズ全読破しなければ。この夏の間に読み終えたいな。
こういうシリーズ物は全部読んでないうちに個別にランクを付けるのはどうかと思うので全てを読み終えて総括したいと思う。
【ランク】-
【読書中メモの総覧】なし
【備考】2009年8月19日に読み終えた。
2009/08/16
コインロッカー・ベイビーズ(村上龍)☆
【タイトル】コインロッカー・ベイビーズ
【著者名】村上龍
【発行年月日(初版)】新装版文庫 2009/7/15
【登場人物の年齢層】
【概略】1972年夏、キクとハシはコインロッカーで生まれた。母親を探して九州の孤島から消えたハシを追い、東京へとやって来たキクは、鰐のガリバーと暮らすアネモネに出会う。キクは小笠原の深海に眠るダチュラの力で街を破壊し、絶対の解放を希求する。毒薬のようで清々(すがすが)しい衝撃の現代文学の傑作が新装版に!
【感想】文庫の新装版が出たので買って読んでみた。今まで読んだ村上龍の作品は三作目となる。まず読みはじめて思ったことは、読みに難しい漢字がかなり使われているのが読んでて受け取られた。元は1980年に出ているので難しい漢字が使われているのは何となく推察できるが、所詮漢検準二級の語彙はこんなもんかとなんだかむなしい気分になった。パソコンの変換でも出てこない字が多くて、読めなかった字一覧を作る計画が挫折してしまった。
さて内容についてだが、一言で言えばあらすじにも書いてある通り「清々しい」である。中身が濃く、非常に破壊的である。主人公のキクが実の母親を自作銃で殺す場面などは引きずり込まれる感じがした。できればダチュラを用いて町を破壊する場面を描写してほしかった。
とても1980年に書かれたとは思えない作品であった。完成度も高く、もう一度読み返したい作品であった。
金原ひとみの解説が微妙。解説ではなく感想のような印象を受けた。個人的には「解説」をしてほしいものなのだが、こういうものなのだろうか。
【ランク】7.5
【読書中メモの総覧】漢字が難解 65 74 79 薬島 112 117 144 179 214 221224 277 289 圧倒的なスケール 引きずり込まれる カタルシス 393 499 505 519 533
【備考】2009年8月14日に読み終えた。再読を促す。
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