【タイトル】失楽園 上・下
【著者名】渡辺淳一
【発行年月日(初版)】2004年01月25日
【登場人物の年齢層】30代〜
【概略】突然閑職に追いやられた敏腕編集者・久木。失意にくれる彼の前に、夫との冷え切った関係を持て余す美しき人妻・凛子が現れる。まるで結ばれるのが宿命であるかのように、ふたりは激しい恋に落ちてしまう。その純粋なる想いを貫き通すため、ふたりは究極の愛の世界へと足を踏み入れる―。「人を愛する」ということは、どういうことなのか?男女の愛の極限を描き切った、渡辺文学の最高傑作。
家庭や社会からの孤立が深まっていくなか、それでも久木と凛子は逢瀬を重ねつづける。逢うごとに、体を重ねるごとに、ふたりの愛と性の密度は高まっていく。やがて訪れる「この愛もいずれは壊れるかもしれない」という不安と怖れ。ふたりの愛を永久不変のなかに閉じ込めるために、彼らが選んだ道はひとつしかなかった…。空前絶後のベストセラーとなった、至高の恋愛小説。
【感想】なんとなく名前を覚えていたので。
端的に言ってしまえば男女の不倫話なのだが、そんな枠組みには到底収まらない中身である。この書で描かれてある男女の交わりは今まで読んだ本のなかでも特に官能的で、かといって卑猥な印象はない、もはや高尚な域である。
深い味わいを知った二人が段々そこから抜け出せなくなるのは読んでいて複雑だ。登場人物と同じようにこのまま堕ちていくだろうと思う一方、何らかのきっかけで関係が崩れていくのもあり得る、一体どのようになるのかと思わずにはいられない。阿部定の話からの心中エンドだってあり得る。
酔った凛子が妖しく久木の首を締める場面はなかなかの狂気を感じた。描かれている普段の様子とのギャップも相成ってなかなかの凄みを出している。
登場人物の二人の会話は俗っぽさを感じさせない、どこか世間離れした印象を受ける。描かれている世界観も世間から隔離された場所が多い気がする。
自分はごく一部の例外を除いて自殺は絶対悪だと考えていて、仮にも生命を与えられたのだからどんな形でも全うすべきと考えている人間である。
など思う一方、この小説のようなこういった心中には非常に崇高で悪くないと感じる。自分は幸せの絶頂で、これからは下りしかないから幸せのうちに共に死ぬと思わせるような相手が果たして存在するのか疑問で、この点で二人を非常に羨ましく感じる。
上巻を読んだ時点でこのような結末は少しは想像していたが、交わりあい共に達しながら逝くという一種のハッピーエンドは想像できなかった。だが、あえて、心中の引き金となった出来事を考えると、やはり主人公久木の怪文書による子会社への異動だと思う。この出来事によって……と考えてみたが、この出来事がなかったとしても心中という結末に変わりはなかったように思われる。
Amazonの評価を見るとなかなか手厳しい評価が並ぶ。まあ何とも言えんな。
【ランク】7
【読書中メモの総覧】
【備考】2011年9月下旬に読み終えた。