【タイトル】クロイツェル・ソナタ 悪魔
【著者名】トルストイ
【訳者名】原卓也
【発行年月日(初版)】1974年6月10日(文庫)
【登場人物の年齢層】成人
【概略】嫉妬のため妻を殺した男の告白を通して、惨劇の理由を迫真の筆に描き、性問題に対する社会の堕落を痛烈に批判した『クロイツェル・ソナタ』、実在の事件に自身の過去の苦い経験を交えて懺悔の気持をこめて書いた『悪魔』。性的欲望こそ人間生活のさまざまな悪や不幸、悲劇の源であるとして、性に関するきわめてストイックな考えと絶対的な純潔の理想とを披瀝した中編2作。(「BOOK」データベースより)
【感想】図書館のリサイクル本にあったのがきっかけ。 トルストイといえば「戦争と平和」が有名で、この本を読み始めたときも「戦争と平和を書いた著名な人だからこの本も結構難解なんだろうな」という気持ちで読み始めたが、読み終えてみると結構シンプルな話で難解さはあまりなかったように思う。クロイツェル・ソナタのほうは強烈な嫉妬のあまり妻を殺してしまう男の物語で、そこからトルストイのストイックな思想が書かれている。最初の方はかなり厳しい禁欲思想が教訓的に展開されているので少々だるいが、後半になると男の回想に入り、男が妻を刺してしまう場面は結構どきどきした。 『悪魔』も、結婚した良家の息子が昔深い仲となった女に対する欲望に葛藤を描いた作品である。こちらも最終的に主人公は自殺し、性的欲望は破滅を招くことを謳っている。この『悪魔』はトルストイ自身の経験と実在の事件を元に描かれているので葛藤の心情部分に真実味を帯びているようだった。
当然の事ながら時代設定は古く、元の作品は1899年に出版されている。この文庫本もハードカバーの方は1952年に出版されている古さである。
ただ文字サイズが小さいので中篇と書いてあるが量的には一冊の本に相当すると思う。(戦争と平和に比べたら圧倒的に少ないが…)
『トランスポーター3』において、刑事が「ロシア文学は暗いものばかり」的なコメントをしていたのを思い出した。確かに自分が今まで読んだものはどれも暗いものばかりだなあ。この『悪魔』も、書き上げた後にトルストイは別のバージョンを考えていたそうで、それは昔の女を射殺したあと裁判で精神異常が認められ、最後には無惨なアル中患者になるというものである。こちらはさらに鬱で暗い。ロシア文学を読むときはある程度心構えが必要である。
【ランク】(6.5)
【読書中メモの総覧】
【備考】2010年4月に読み終えた。